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2005年12月27日

●お騒がせ設計業界の事件・・・・

○△□ さま

 写真撮影の件、来年の5月初めくらいにお願いいたしたく思っております(新緑がキレイで、皐月の花も咲き始める頃・・・)。実は、今年はウチの事務所で4件竣工したのですが、写真撮影できたのがそのうち一件のみでした。あとは、昨年の秋口完成の積み残し撮影を6月に行い、夏は天気が不順だったり天空が過水蒸気(青空がキレイにでない)だったりで秋晴れの待機・・・。秋になればキレイな青空が続くだろうと、カメラマン氏とスケジュール調整していたら、秋も晩秋にさしかかってしまい、そうこうしていたら、一気に大雪が降り、結局、今年竣工したうちの3件が来年春の撮影に持ち越しとなってしまいました(冬の青空もキレイですが、いかんせん植栽の緑がない)。

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 先日のメールにも、ちょっと書かせていただきました我々業界の事件の件、私もこの一ヶ月あまり、随分と気がおも〜くなっております。ここいらで、この事件について、私の思っていることなどを吐き出さずには(誰かに話さずには)おれない心境でもあります。

 世の中、専門職業家の分野でも、色んな事故はつきものとは思っております。但し、事故が起ってしまったあとで、いかにして早急・万全な復旧と補償ができうるか、が大切なのは当たり前です。補償の責任が負えるだけの体力(資力)は必要です。責任を負えるだけの体力がなければ、専門職業家のための賠償保険に加入していなければなりません。設計事務所の場合は「建築家賠償保険」があります。もちろん私も加入しております。ちなみに、姉歯事件は『犯罪』であって、決して専門職業家の「損害賠償保険」の対象とはなりません。

1)相当真剣になって研究を重ねて、慎重を期しても、起ってしまう事故。

2)何度もチャレンジ、実証済みの事例でも、起りうる事故→慣れ、油断、スタッフ任せ等々からくる事故。これはヤバイ。

3)世の中、その道の「士」ならば、だれでもこなせる事例でおきる事故→あきらかに気の緩み、無責任な体制からくる事故。相当ヤバイ。

4)性悪的な事故→悪の極み。

 医療事故の場合は、4)の「性悪的な事故」は何十年に一回ぐらいかとは、思いますが・・・それでも過去十年二十年のあいだには、エイズ治験の話しやら、所沢の産婦人科医の事件やら・・・いくつかは世間を騒がせておりました。

 ところが、今回の件、過去の日本の建築業界の歴史上、初めて4)の「性悪的な事故」、しかも人命にかかわるインチキな事例がバレた訳です。ですから、世の中も、どう対処・反応したら良いか?また、悪質さにおいては列車の脱線事故やら、三菱のリコール隠しなんかよりも、数十倍悪質です(事実、全部建て直して500億円、それ以外に倒産やら破産やらで関係者の膨大な損害、等々・・・)。

 今年も?なのか、とんでもない事件が続発していました。親と子が殺める事件、不祥事の偽装、人為的な単純ミスから発生する重大な事故・・等々。なにか、我々日本人の倫理観が崩壊しはじめているように思えてなりません。今回の構造偽造事件も、親が子を殺める事件と全く同じ次元の話しです。それと、あまりに経済性ばかりを追い求める企業社会。コンピューターシステムを過信して、実世界ではあり得ない事象でもバーチャル世界では成立してしまう、現実とバーチャルのギャップに疑問を持たない感覚・・・・。自分も朝から晩までコンピューターに向かって仕事していますが、やはりコンピューターに頼りだすと、物事の実態(リアリティ)がみえなくなり(バーチャルな画像ばかり独り歩き)、バカになってしまう気分です。パソコンなしでは漢字が書けなくなり、電卓なしでは足し算・掛け算もできなくなっています。コンピューターの場合、膨大なルーチンワークをいとも簡単に、瞬時にこなしてくれます。その過程で「物事の実態」の検証という作業はおろそか・・・に陥りがちです。創りだすのは、我々人間の創造力です。自分の創っているものに対し常に疑問を投げ掛け、繰り返し検証し直す作業も創造の一部です。

 今回の事件で、不思議で、尚且つ腹立たしいのが、姉歯の上の元請け設計事務所。不思議とマスコミでは叩かれていませんが、実は一番責任が重いと思います。同業者がそう言うんだから、間違いありません。今回の構造偽造事件、日経アーキテクチャーに掲載されていた、くだんの偽装構造図面みたら「普通ならば・・・あり得ない配筋、構造断面」と真っ先に思いました。実務の設計や現場監理を経験した人間(実務経験、おおよそ5年以上?)ならば、かなり不思議に思う内容の構造図であります。元請けの設計事務所がそれを、そのまま通してしまうのは異常です。あのような構造図面をみて(みていない?)そのまま確認申請通してしまう検査機関・行政もバカです。実務に疎すぎます・・・。 正直、今の分譲マンションの大半はパソコンCADで、同じような物件図面の書き写し・修正で作成できてしまいます(創造的な設計がなされている分譲マンションを除き)。だから、設計料も3%〜4%と、私らのような住宅作品主体のアトリエ事務所ではあり得ない料率だったりしています。今の分譲マンションの設計現場においては「自分の創っているものに対し常に疑問を投げ掛け、繰り返し検証し直す作業も創造の一部です。」なんてこととは無縁で設計できてしまうし、「カネと時間」が許してくれない状況です・・・。(一部の創造的な設計がなされている分譲マンションを除き)分譲マンションばかり設計している設計事務所では、そこで働く若い衆にも本当の意味での技術力や創造力が培われない状況が生まれたしまう・・・ように思います。

 昔は(自分の修業時代だった20年も前頃)、建築現場にいても職人さんが経験に基づいた技術や「やっちゃあ、いかんこと」なんかが必ずあって、設計者がデザインのことで主張しても頑としてやらせてくれない、こともありました。自分が若い頃、自分の設計技術力・知識が足りなくても、現場の職人さん達に助けてもらって初めて実現できたことも沢山ありました。今回の構造偽造事件、ちょっと前時代のゼネコンの監督さんや鉄筋工職人さん達が、日経アーキテクチャーに掲載された偽装構造図面みたら・・・相当不思議・不安がる?ような配筋量、設計内容に思われることでしょう・・・。偽造マンション施工した鉄筋屋さんが悪い、と言っているのではなくて・・・今の建築現場においては、あまりにも「カネと時間」に追われて、現場で働く人たちもこなすのが精一杯、といった状況です。バブル崩壊以降の淘汰・リストラを経て、建設現場の人手・手間も減らされた挙句、現場で考える余裕もなく「カネと時間の為にこなさなくてはならない」状況では「経験に基づいた技術・倫理観」のモラルハザードも働かない、ように思います。
 まがりなりにも設計事務所を主宰する自分としては、自分達の責任の重さを実感する昨今であります。

なが〜くなり、すみません。

皆様のご多幸をお祈り申し上げるとともに、良い新年をお迎えください。

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コメント

こんにちは。
私の記事にTBをいただいているようなのですが、以前(12/29)に既にTBをいただいている記事に、再度同じ記事からのTBがいくつもきているようです。
どちらかのTB機能の不具合かもしれませんが、念のためご確認願えませんでしょうか。

なお同一記事に重複したTBについては削除させていただきますので、悪しからずご了承下さい。

あの事件以来ここに度々お邪魔し、あの件に関してのコメントが登場するのを待ってました。
期待通りの同業者ならではの BOSS のコメントいいねぇ~ 、まあ「フェイク」なものの方が売れてしまう時代ですけど、めげずにこれからも「本物」を作って下さい。
良いお年を!

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