●オープンハウス・・・・
このcolumnもブログスタイルに更新してからは、こまめに記事書くようになったのは結構だが・・・ここんところ、喰いモノねたが続いているようで・・・・。
昨日は久々に、他の設計屋さんのオープンハウスに見学参じてきた。この方のコノ作品です。設計者の中村さん、見学させていただきまして有り難うございました。大変勉強になりました。それと、施工者の加納工務店さんには、いつも大変お世話になっております。
ひとことで言って、随分感心しました。中村さんは隈研吾事務所で修業積まれた方。感心したのは、上の写真でもお分かりかと思うが、細〜い(60mmφ?)鉄骨丸柱(しかも溶接部分は無垢鋼材)で支える構造計画。設計技術、施工技術的には思いっきり高度なレベルの設計である。そりゃあ、構造設計は「オーク構造設計」の新谷センセイだし、鉄骨施工は、伊藤豊雄の仙台メディアテークを施工した造船鍛冶屋さんだもんなぁ・・・でなきゃあ、あのレベルの構造設計や鉄骨工事はムリだて・・・。
驚いたのは、設計者がまだ31歳の若さ(?、失礼)で、あのレベルの建物を実現させた実力である。まず、施主に思い切った空間構成を認めてもらえる、という実力。次に、かなり高度な設計内容をサポートしてくれる構造設計や設備設計の人達に恵まれ、尚且その人たちから信頼されていなければ実現できない。次に、高度な特殊施工技術をもつ専門施工業者を日本各地から引っ張ってこられる力量(高度な溶接技術をもつ石巻の造船鍛冶屋さんやら、相当レベルの高い塗装工事は大阪から出張してきたらしい・・・)。
この建物見学して、自分に気がついたこと・・・自分はあらためて「堅実主義の名古屋人」なんだなぁ、と思ってしまった。だって、あの細〜い無垢の鉄骨柱林立する空間の面白さの価値、はよ〜くわかるが・・・・。
天井の溶接接合された鉄板スラブでもって、屋根面の水平剛性を確保しているのは理解できる。伊藤豊雄やら妹島さんの構造設計している佐々木ダイセンセイがよくやっていらっしゃる構造型式だ。無垢の細〜い丸柱で支える構造型式は隈研吾+オーク設計の新谷さんで実践済みの構造型式かと思う。
あの室内空間と屋根の軽さを考えれば、普通に屋根水平ブレースを天井裏に隠すことができるんじゃあないか?それで構造的にも成立するか、と思う。そこいら辺をご本人には聞き損なってしまった・・・。
お金かけて「溶接接合された鉄板スラブ状で水平剛性確保」しなくても同様な空間ができるならば?その分のお金は、建物の設計の力量にしては物足りない外構デザインや屋外看板などのサイン類金物に廻せるんじゃあないかなぁ・・・いかにも「堅実主義の名古屋人」的発想してしまう自分に気がつく・・・。
でも、でも、・・・こんな自分のような発想で建築を創作していたんじゃあ、いつまで経っても、ありきたりのストラクチャーデザインから脱せれない???・・と思う自分にも気が付いた。設計屋稼業、いつもチャレンジするレベルのストラクチャーデザインで切磋琢磨していることも大切。それがあって、人を感動させる空間が実現できるんじゃあないか、とも思う。そんなこんな、色々と考えさせて頂いたオープンハウスでした。
2005年12月29日
●本日は仕事納め・・・・
本日は仕事納め。午前中に「it」さんの打合せ。午後からは、恒例の大掃除。事務所内もキレイさっぱりした。おかげで疲れてしまった。明日は我が家の大掃除だ・・・ヤル気がでない・・・あ〜いやだ・・・。
「it-residence」はmutsuの担当物件。名駅地区の街中に建ち、敷地は商業地域の25坪。廻り見上げれば、セントラルタワービルを見上げて、オフィスビルだのホテルだのが建っている界隈である。いかんせん、住宅としての明かりとりは上へ上へ向かう。部屋中からも見上げれば・・・青空そびえ立つセントラルタワービル、4階にはルーフガーデンこしらえ、家族でバーベキュー・・・ってなもんだ。
それでは皆様、2005年もあと数日で暮れようとしていますが、本年も大変お世話になり、誠に有り難うございました。皆様にとって、2006年がよりよい年になりますように・・・それでは、よい新年をお迎えください。
2005年12月27日
●お騒がせ設計業界の事件・・・・
○△□ さま
写真撮影の件、来年の5月初めくらいにお願いいたしたく思っております(新緑がキレイで、皐月の花も咲き始める頃・・・)。実は、今年はウチの事務所で4件竣工したのですが、写真撮影できたのがそのうち一件のみでした。あとは、昨年の秋口完成の積み残し撮影を6月に行い、夏は天気が不順だったり天空が過水蒸気(青空がキレイにでない)だったりで秋晴れの待機・・・。秋になればキレイな青空が続くだろうと、カメラマン氏とスケジュール調整していたら、秋も晩秋にさしかかってしまい、そうこうしていたら、一気に大雪が降り、結局、今年竣工したうちの3件が来年春の撮影に持ち越しとなってしまいました(冬の青空もキレイですが、いかんせん植栽の緑がない)。
先日のメールにも、ちょっと書かせていただきました我々業界の事件の件、私もこの一ヶ月あまり、随分と気がおも〜くなっております。ここいらで、この事件について、私の思っていることなどを吐き出さずには(誰かに話さずには)おれない心境でもあります。
世の中、専門職業家の分野でも、色んな事故はつきものとは思っております。但し、事故が起ってしまったあとで、いかにして早急・万全な復旧と補償ができうるか、が大切なのは当たり前です。補償の責任が負えるだけの体力(資力)は必要です。責任を負えるだけの体力がなければ、専門職業家のための賠償保険に加入していなければなりません。設計事務所の場合は「建築家賠償保険」があります。もちろん私も加入しております。ちなみに、姉歯事件は『犯罪』であって、決して専門職業家の「損害賠償保険」の対象とはなりません。
1)相当真剣になって研究を重ねて、慎重を期しても、起ってしまう事故。
2)何度もチャレンジ、実証済みの事例でも、起りうる事故→慣れ、油断、スタッフ任せ等々からくる事故。これはヤバイ。
3)世の中、その道の「士」ならば、だれでもこなせる事例でおきる事故→あきらかに気の緩み、無責任な体制からくる事故。相当ヤバイ。
4)性悪的な事故→悪の極み。
医療事故の場合は、4)の「性悪的な事故」は何十年に一回ぐらいかとは、思いますが・・・それでも過去十年二十年のあいだには、エイズ治験の話しやら、所沢の産婦人科医の事件やら・・・いくつかは世間を騒がせておりました。
ところが、今回の件、過去の日本の建築業界の歴史上、初めて4)の「性悪的な事故」、しかも人命にかかわるインチキな事例がバレた訳です。ですから、世の中も、どう対処・反応したら良いか?また、悪質さにおいては列車の脱線事故やら、三菱のリコール隠しなんかよりも、数十倍悪質です(事実、全部建て直して500億円、それ以外に倒産やら破産やらで関係者の膨大な損害、等々・・・)。
今年も?なのか、とんでもない事件が続発していました。親と子が殺める事件、不祥事の偽装、人為的な単純ミスから発生する重大な事故・・等々。なにか、我々日本人の倫理観が崩壊しはじめているように思えてなりません。今回の構造偽造事件も、親が子を殺める事件と全く同じ次元の話しです。それと、あまりに経済性ばかりを追い求める企業社会。コンピューターシステムを過信して、実世界ではあり得ない事象でもバーチャル世界では成立してしまう、現実とバーチャルのギャップに疑問を持たない感覚・・・・。自分も朝から晩までコンピューターに向かって仕事していますが、やはりコンピューターに頼りだすと、物事の実態(リアリティ)がみえなくなり(バーチャルな画像ばかり独り歩き)、バカになってしまう気分です。パソコンなしでは漢字が書けなくなり、電卓なしでは足し算・掛け算もできなくなっています。コンピューターの場合、膨大なルーチンワークをいとも簡単に、瞬時にこなしてくれます。その過程で「物事の実態」の検証という作業はおろそか・・・に陥りがちです。創りだすのは、我々人間の創造力です。自分の創っているものに対し常に疑問を投げ掛け、繰り返し検証し直す作業も創造の一部です。
今回の事件で、不思議で、尚且つ腹立たしいのが、姉歯の上の元請け設計事務所。不思議とマスコミでは叩かれていませんが、実は一番責任が重いと思います。同業者がそう言うんだから、間違いありません。今回の構造偽造事件、日経アーキテクチャーに掲載されていた、くだんの偽装構造図面みたら「普通ならば・・・あり得ない配筋、構造断面」と真っ先に思いました。実務の設計や現場監理を経験した人間(実務経験、おおよそ5年以上?)ならば、かなり不思議に思う内容の構造図であります。元請けの設計事務所がそれを、そのまま通してしまうのは異常です。あのような構造図面をみて(みていない?)そのまま確認申請通してしまう検査機関・行政もバカです。実務に疎すぎます・・・。 正直、今の分譲マンションの大半はパソコンCADで、同じような物件図面の書き写し・修正で作成できてしまいます(創造的な設計がなされている分譲マンションを除き)。だから、設計料も3%〜4%と、私らのような住宅作品主体のアトリエ事務所ではあり得ない料率だったりしています。今の分譲マンションの設計現場においては「自分の創っているものに対し常に疑問を投げ掛け、繰り返し検証し直す作業も創造の一部です。」なんてこととは無縁で設計できてしまうし、「カネと時間」が許してくれない状況です・・・。(一部の創造的な設計がなされている分譲マンションを除き)分譲マンションばかり設計している設計事務所では、そこで働く若い衆にも本当の意味での技術力や創造力が培われない状況が生まれたしまう・・・ように思います。
昔は(自分の修業時代だった20年も前頃)、建築現場にいても職人さんが経験に基づいた技術や「やっちゃあ、いかんこと」なんかが必ずあって、設計者がデザインのことで主張しても頑としてやらせてくれない、こともありました。自分が若い頃、自分の設計技術力・知識が足りなくても、現場の職人さん達に助けてもらって初めて実現できたことも沢山ありました。今回の構造偽造事件、ちょっと前時代のゼネコンの監督さんや鉄筋工職人さん達が、日経アーキテクチャーに掲載された偽装構造図面みたら・・・相当不思議・不安がる?ような配筋量、設計内容に思われることでしょう・・・。偽造マンション施工した鉄筋屋さんが悪い、と言っているのではなくて・・・今の建築現場においては、あまりにも「カネと時間」に追われて、現場で働く人たちもこなすのが精一杯、といった状況です。バブル崩壊以降の淘汰・リストラを経て、建設現場の人手・手間も減らされた挙句、現場で考える余裕もなく「カネと時間の為にこなさなくてはならない」状況では「経験に基づいた技術・倫理観」のモラルハザードも働かない、ように思います。
まがりなりにも設計事務所を主宰する自分としては、自分達の責任の重さを実感する昨今であります。
なが〜くなり、すみません。
皆様のご多幸をお祈り申し上げるとともに、良い新年をお迎えください。
2005年12月23日
●最近のProjectなど・・・・
まずは、「Tj-residence」。名古屋市内に計画中のミニマルスタイルの木造住宅。クライアントさんは30代前半の若い家族です。相変わらず外観は素っ気なくシンプルに。道ゆく人からは住まう人のプライバシーが伺うことができないように配慮。内部空間は吹抜け越しの青空を見上げる?空間にした案やら、中庭を囲い込んで案やら、色々試行錯誤繰り返しの日々・・・担当のitoは、つい先日一級建築士の試験に合格して、クライアントさんにおだてられ舞い上がる日々、BOSSは相変わらずitoのプランに文句タラタラいいつつ、ド発破かける日々。
お次が「Hd-residence」あらため「Hd-apm」。そう、8月より着工しておりました「Hd」の全面変更設計です・・・ 話しだせば長〜くなってしまう諸々の事情・・・かといって、仕事上でトラブっているわけでは決してありませんので、念のため・・・で、今度は下層賃貸マンション+上階オーナー邸として、再設計しております。下層の賃貸部分はメゾネットタイプやら専用コートヤード付タイプやら、あいかわらず一筋縄ではいかぬ設計内容になっております。また、そのうちに「八事南山にデザイナーズマンション!」とかいって、入居者募集のホームページたちあげます。乞うご期待を。「Hd-apm」は年明けから早速、延々と4ヶ月にわたる実施設計、100kmマラソンの日々、気も遠くなりそうです。
次は「it-residence」。名古屋市名駅地区にたつ「タテ型」の住宅。高層のオフィスビルやらに囲まれた一画に建つ。目指すは「タテ型のミース・ファン・デ・ローエ」か?う〜ぅん、確かに厳しい敷地条件に思わず唸ったりしながら試行錯誤の計画である。でも、なんだかとてもワクワクするような建築ができそうでもある、と担当のmutsuが曰っております。
2005年12月22日
●皆様、お久し振りでございます。
皆様、お久し振りでございます。アーキスタジオのcolumn、暫く休載しておりまして、相済みません。この10月11月はなにやら、仕事の身辺バタバタしておりまして・・・・SuにNrと二軒の住宅が実施設計アップしたり、 話しだせば長〜くなってしまう諸々種々雑多事情やらなんだかんだ・・・かといって、仕事上でトラブっているわけでは決してありませんので、念のため・・・。そこへもってきて、この設計業界にとんでもない「事件」が巻き起こり、事件発覚以降、毎日毎日その話題でもちきり。「世の中あり得ない、信じられない、ことが起こった」というのが実感です。同時に、同業者として大変腹立たしい思いでもあります。いくら『オレ達ではあり得ない!!』と叫んだところで、ここ数週間のマスコミのワイドショーレベルの放送内容、今日本で一番ホットな「士」商売のこの身としては心傷める思いであります。私の個人的な意見としては、
『私達の業界に関する諸法令が性善説にたっており、罰則規定もその他の「士」商売に比べて、責任の重さに比しては軽すぎる。』というのが実感です。この際、宅建業並の性悪説(私自身は宅建資格ももっております)にもとづき、罰金・禁固規定やら、設けるべし、という思いです。
※以下は、今回の事件に関してだされた「日本建築構造技術者協会」の提案ですが、私も全く同感だと思います(以下、同サイトからの引用)。
1)確認申請料を10倍にする。(あまりにも低額で、責任を負えない。)
2)構造設計者の法的な位置づけ、責任を明確化した法制化。
3)必要に応じて、建築指導課および民間確認機関はピアチェックを要求することが出来る。
4)発注者および設計者に保険を義務付ける。(保険会社は、保険金を支払いたくないので、構造設計者と構造設計を審査する。)
※あと、この事件に関する参考ブログでは、ある構造設計者さんが大変分かり易く、現役の構造設計家としての意見を書いておられます。興味のあるかたは「構造計算書偽造問題」の記事/ウェブリブログ」をご覧になってください。
そんなこんなで・・・・まだまだ、この騒動は延々つづくでしょう・・・・